ネオジム磁石の耐熱グレードとは?N35・N42・SH・UHの違いと磁選機選定のポイントを解説

ネオジム磁石は現在実用化されている永久磁石の中でも非常に強力な磁力を持ち、磁選機やマグネットバー、マグネットフィルターなど幅広い異物除去設備で採用されています。
しかし、ネオジム磁石を選定する際に「N35」「N42」「N52」や「H」「SH」「UH」などの表記を見て、違いが分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
実際の現場では「磁力が高い製品を選んだのに高温環境で性能が低下した」「耐熱仕様だと思っていたら減磁が発生した」といったトラブルもあります。
ネオジム磁石は磁力の強さだけでなく、使用温度に応じた耐熱グレードを選定することが重要です。
ネオジム磁石の型番は前半の数字が磁力性能、後半のアルファベットが耐熱性能を表しており、両方を確認して選定する必要があります。
この記事ではネオジム磁石の耐熱グレードの意味や見方、磁選機で失敗しない選定方法について詳しく解説します。
目次
この記事でわかること
- N35やN52などの数字の意味
- H・SH・UHなど耐熱グレードの違い
- 高温で磁石性能が低下する理由
- 磁選機で耐熱性能が重要な理由
- 用途別の選定ポイント
ネオジム磁石の耐熱グレードとは
ネオジム磁石の耐熱グレードとは、磁石が性能を維持できる温度範囲を示す分類です。
ネオジム磁石は非常に強力な磁石ですが、温度の影響を受けやすい特徴があります。
温度が上昇すると磁力が低下し、一定温度を超えると元の性能に戻らない不可逆減磁が発生する場合があります。
そのため使用環境に応じて適切な耐熱グレードを選ぶ必要があります。
磁選装置においても重要な選定項目の一つです。
N35やN42の数字は何を意味するのか
ネオジム磁石の型番で最初に表示される数字は、最大エネルギー積と呼ばれる磁気性能の指標を示しています。
一般的には数字が大きいほど強力な磁石になります。
代表的なグレードは以下の通りです。
| グレード | 特徴 |
|---|---|
| N35 | 標準的な磁力 |
| N38 | やや高磁力 |
| N42 | 高磁力 |
| N48 | 非常に高磁力 |
| N52 | 最高クラスの磁力 |
ただし数字が高ければ必ず優れているというわけではありません。
使用環境との適合性が重要になります。
H・SH・UHなどのアルファベットの意味
数字の後ろにつくアルファベットは耐熱グレードを示しています。
一般的な分類は以下のようになります。
| 耐熱グレード | 一般的な使用温度の目安 |
|---|---|
| 標準品 | 約80℃程度 |
| H | 約120℃程度 |
| SH | 約150℃程度 |
| UH | 約180℃程度 |
| EH | 約200℃程度 |
| AH | 約220℃程度 |
実際の許容温度はメーカーや磁石サイズによって異なるため、必ず仕様書を確認する必要があります。
なぜ耐熱グレードが必要なのか
ネオジム磁石は高温環境で磁力が低下します。
これは磁石内部の磁区が熱エネルギーによって乱れるためです。
温度上昇による影響は次のような流れで発生します。
- 温度上昇
- 磁区の乱れ
- 磁力低下
- 減磁の進行
- 回収性能低下
高温環境で標準グレードを使用すると、異物除去能力の低下につながる場合があります。
磁選機で耐熱グレードが重要になる理由
磁選機の目的は金属異物の除去です。
磁石性能が低下すると、鉄粉や摩耗粉の回収率にも影響します。
特に以下のような設備では注意が必要です。
- 乾燥工程
- 押出成形設備
- 加熱混合設備
- 焼成設備周辺
- 高温粉体搬送ライン
高磁力マグネットバーを導入していても、耐熱グレードが不足していれば期待した性能を維持できない場合があります。
N52よりN35SHが適している場合もある
現場では高磁力グレードばかりに注目しがちです。
しかし実際には使用環境によって適切な選択が異なります。
例えば高温環境では次のようなケースがあります。
| 環境 | 選定例 |
|---|---|
| 常温設備 | N52 |
| 高温設備 | N35SH |
| 高温粉体 | N38UH |
| 加熱工程 | N35EH |
高磁力グレードよりも耐熱グレードを優先すべき場面は少なくありません。
食品工場で注意したい温度条件
食品工場では高温環境が意外と多く存在します。
例えば次のような工程です。
- 焙煎工程
- 乾燥工程
- 蒸煮工程
- 殺菌工程
- 温風搬送ライン
原料温度だけでなく周辺設備からの放射熱も考慮する必要があります。
粉体設備で発生しやすい選定ミス
粉体設備では搬送ラインの温度が見落とされることがあります。
特に空気輸送設備では圧縮空気の影響で温度が上昇する場合があります。
また次のようなケースもあります。
- 設備停止中の温度上昇
- 直射熱の影響
- モーター発熱
- ヒーター近接設置
設計時には通常運転時だけでなく異常時も考慮することが大切です。
耐熱グレード以外に確認したい項目
耐熱性能だけで磁選機を選定するのは不十分です。
以下の要素も確認する必要があります。
- 表面磁束密度
- 磁場到達距離
- 磁石サイズ
- 磁石配置
- 耐食性
- 清掃性
- 使用環境
総合的に評価することで適切な異物除去性能を確保しやすくなります。
メーカーへ確認したいポイント
耐熱グレードの選定では、次の情報を整理して相談するとスムーズです。
- 原料温度
- 周辺温度
- 搬送方式
- 処理量
- 異物サイズ
- 設置場所
- 清掃方法
実際の運転条件を共有することで、より適切な磁石仕様を提案してもらいやすくなります。
N52の方がN35より必ず優れていますか?
磁力性能だけを見るとN52の方が高い傾向があります。ただし高温環境ではN35SHやN35UHなど耐熱グレードの高い製品の方が適している場合があります。
耐熱グレードが高いほど磁力も強くなりますか?
必ずしもそうではありません。耐熱性能と磁力性能は別の指標です。耐熱グレードを上げると磁力がやや低下する場合もあります。
食品工場ではどのグレードがよく使われますか?
使用温度によって異なります。常温工程では標準グレードが採用されることもありますが、高温工程ではSHやUHグレードが選ばれることがあります。
温度上昇による減磁は回復しますか?
可逆減磁の範囲であれば回復する場合がありますが、不可逆減磁が発生すると元の性能には戻りません。
まとめ
ネオジム磁石の型番には磁力性能と耐熱性能の両方が含まれています。
磁選機やマグネットバーを選定する際は、磁力だけでなく温度条件も考慮することが重要です。
今回のポイントを整理すると以下の通りです。
- N35やN52は磁力性能を示す
- HやSHは耐熱グレードを示す
- 高温環境では耐熱グレードが重要になる
- 不可逆減磁が発生すると性能は回復しない
- 食品や粉体設備では温度条件の確認が必要
- 磁力と耐熱性のバランスで選定することが大切
- 実際の運転条件を基にメーカーへ相談することが望ましい
金属異物対策では「高磁力だから安心」と考えるのではなく、運転温度や設備条件まで含めて評価することが重要です。
ネオジム磁石の耐熱グレードを正しく理解し、自社設備に適した磁選装置を選定することで、安定した異物除去性能の維持につながります。
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